1. 世界の航空輸送マーケット
2002年の統計では、全世界の定期航空利用旅客数は約16億2千万人であるが(前年比99.6%)、米国航空輸送業の市場規模は各国の中で抜群に大きく、全世界の旅客数のうち約40%が米国市場におけるものであり、かつその約90%が米国国内線の旅客である。その中にあって、米国中西部は、シカゴ・オヘア空港を中心として、米国国内航空の大きな市場のひとつであり、世界の航空輸送マーケットの中における重要な位置を占めていると言える。
米国に次ぐのは日本で、世界の路線別旅客数で、東京=札幌、東京=福岡がそれぞれ1位・2位となるなど、狭い国土面積ながら、全世界の約7%の市場規模となっている。以下、英国、中国、ドイツ、フランスと続くが、特に中国は、人口・国土面積という潜在的条件に加え、近年のめざましい経済成長を勘案すると、今後、米国に並ぶ巨大航空マーケットになっていくものと予想される。
2. 米国の航空事情
(1)米国航空業界の動向
米国は1978年に航空輸送業規制緩和法を成立させ、1981年に路線参入・撤退の自由化、1983年には運賃の自由化を実施した。これらの規制緩和により、米国では航空会社の設立が相次ぎ、現在までに200社以上が誕生し、またそのほぼ同数が消えるという熾烈な生存競争を通じて市場の独占的寡占化が進み、現在のアメリカン航空(AA)、ユナイテッド航空(UA)を代表とする「メガ・キャリア」が形成されてきた。
1990年代後半には、米国経済の回復やドル安などにも助けられ、米国の各航空会社は総じて順調に業績を伸ばしてきたが、2000年代に入り状況は一変した。1990年代後半以降、各社とも積極的に供給量を拡大してきたが、米国経済の減速とともに2000年後半頃から需要の伸びが止まり、業績が悪化しつつあったところへ、2001年9月の大規模同時テロ事件、2003年3月からのイラク戦争、SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行など航空産業にとって非常に大きなマイナスファクターが重なり、総じて極めて困難な状況に追い込まれている。
2002年8月にUSエア、12月にユナイテッド航空、2003年3月にハワイアン航空が相次ぎ連邦破産法11条(チャプター11)を申請したほか、多くの航空会社が収益悪化に苦しんでいる。各社とも減便、人員削減等により事業立て直しを図っているが、戦争・SARS等の外的要因が解決したとしても基本的には米国経済の回復が進まない限り、厳しい状況が続くことが予想される。
(2)米国および中西部の航空マーケット
前述の通り、米国はその高い経済力および広大な国土と全米各地に分散している経済拠点(大都市)という地理的条件から、航空輸送に対する需要が旺盛であり、世界でも群を抜いて大きな航空マーケットが形成されている。
米国航空マーケットの主力である国内線については、ニューヨークと西海岸・中西部などを結ぶ路線が最も大きなマーケットとなっているが、シカゴと全米各地を結ぶ路線もかなり大きな需要があり、シカゴ=ニューヨーク、シカゴ=ロサンゼルスをはじめ、シカゴ発着路線も旅客数ランクの上位に多く入っている。(表1)
また、約28万平方kmの敷地と7本の滑走路を擁するシカゴ・オヘア空港は、シカゴそのものの経済的・地理的条件に加え、乗り継ぎの利便性が高いことから、国際線・国内線が多数乗り入れ、航空機の発着回数は世界トップで1日平均約2,500回(2002年)を数え、「世界一多忙な空港」として知られている。(表2)
3. 日本および中西部/日本間の航空事情
2003年前半までの国内景気低迷および同時テロ事件・イラク戦争・SARS等による航空産業の低迷は日本も米国と同じ状況であり、特に近年順調に伸びていた中国をはじめとするアジア路線がSARSの流行による旅行手控えの影響を強く受けたことによる業界のダメージは相当なものであったが、後半に入り日本の景気が民間主導で持ち直し始めたため日米間の航空需要は回復基調にある。
また、SARSの影響が薄れるにつれ米国・アジア間の旅行者も徐々に回復しているもの需要の完全な回復には、今しばらく時間がかかるものと思われる。しかしながら、北京・上海を中心とした中国の著しい経済発展は現在も続いており、それを見越して日中間の航空便はこの2〜3年で一気に倍増している。
4. 航空貨物の動向
2003年は当初SARS・イラク戦争の影響が懸念されたが、世界経済全般の回復基調・中国特需等を背景に航空貨物需要は概ね順調に推移した。中西部においても同様で、2004年も自動車関連部品・プラズマディスプレイ等デジタル関連商品・薬品・ケミカルを中心に堅調な荷動きが期待できよう。来年2月開港予定の愛知県中部国際空港によって同地区との経済的結びつきの深い当地とのパイプが太くなることが期待され、新たな物流構築の期待も高まっている。一方セキュリティの強化と燃油費の高騰は物流コストに深刻な影響を与えつつあり、中東情勢の政治的決着が待たれるところである。