1. 米国金融市場動向
2003年の米国経済は、イラク問題等から不透明感の強いスタートとなったものの、年後半にかけては回復感が鮮明となり、実質GDP成長率は3.1%と前年の2.2%を上回った。大型減税等を背景とした内需の拡大と世界経済の回復を受けた輸出の増加が成長を牽引。
直近2003年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率4.0%。大型減税の効果から20年ぶりの高成長となった7-9月期(前期比年率8.2%)から伸び率は鈍化したものの、高い成長率を維持した。
2004年については、年後半にかけての減税効果の剥落、金利上昇による住宅投資の減速懸念などリスク要因はあるものの、当面は堅調な景気拡大が続くと予想される。積極化してきた企業の設備投資が引き続き景気を牽引すると期待され、また、回復の遅れてきた雇用環境にも徐々に明るさが戻ってくるとみられ、個人消費も引き続き底堅い推移を続けると予想される。
一方、デフレ・リスクへの布石として2003年6月にFFレート誘導目標を1.0%まで引き下げたFRBであるが、年後半にかけて景気回復感が鮮明となる中も、引き続き低金利政策を維持している。2004年1月末に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、2003年8月以来据え置いてきた声明文のコメント「金融緩和をかなりの期間継続する」を削除し、「金融緩和の解除については辛抱し得る」との表現へ変更。緩和スタンスをやや緩めたものの、政策金利は据え置かれた。(表1)
景気回復期待の高まりから2003年央に一時急上昇した長期金利も、FRBによる低金利政策の継続やインフレ率の安定等から、その後は概ね安定的な推移が続いている。2004年については、景気回復が鮮明化してきていることに加え、大統領選挙を控えてFRBの舵取りが難しくなることも考えられ、金融政策への思惑が錯綜し易く、長期金利が不安定な動きとなる可能性もあろう。(表2)
足元、株価は堅調な推移が続いている。イラク情勢への不安感から年初は軟調な展開となったものの、3月以降はダウ、ナスダックともに一本調子で上昇。3月の最安値から12月末までの上昇率は、ダウで約4割、ナスダックで約6割に達した。2004年については、堅調な企業業績がフォローとなるも、2003年の上昇ピッチが速かったこともあり、やや伸び悩み感が生じる可能性もあろう。(表3)
為替は大きくドル安が進行した。大幅な財政赤字と経常赤字の双子の赤字への懸念等からドルは、円、ユーロ等の主要通貨に対し軒並み下落。日本の金融当局による円売りドル買い介入もトレンドを変えるほどの効果はなく、年初120円近辺でスタートした円相場は年末には100円台後半まで円高が進んだ。2004年は、11月の大統領選挙を控え、為替介入への批判が高まり易く、引き続きドル安リスクが高いと予想される。また、一部には人民元切り上げ観測もあり、為替市場の波乱要因となる可能性もあろう。(表4)
2. 米国金融機関動向
2003年の米国金融機関の業績は好調な結果となった。年後半にかけては、長期金利上昇の影響から住宅ローンのリファイナンス需要の大幅減がみられたものの、カード、消費者金融等の好調に支えられ、リテール部門は前年に引き続き好調。低迷していた投資銀行部門も、株価回復等に支えられ、大幅な増益となった。また、景気回復の中、クレジットコストは大幅に減少し、収益押し上げに大きく寄与した。
2004年についても、金融機関の業績は堅調に推移すると予想される。金利動向の影響を受け易い住宅ローン需要には懸念があるものの、景気回復を受け、低迷してきた企業の資金需要には徐々に回復感が広がってくると予想される。
また、米銀に関して2003年の大きな特徴は、バンク・オブ・アメリカによるフリート・ボストンの買収、JPモルガン・チェースによるバンク・ワンの買収にみられるような大型再編の活発化。米国金融業界におけるの競争は激化しており、2004年には更なる再編の加速も想定されよう。
3. 中西部の金融機関及び金融動向
2003年上期における中西部6州(イリノイ、ウィスコンシン、ミシガン、インディアナ、オハイオ、ケンタッキー)の商業銀行の業績をみると、全体としては概ね全米並みの結果となるも、州別には明暗を分ける結果となった。
景気回復力が相対的に弱いイリノイ州では、当期利益が前年比減少し、不良債権比率も他州比高めに止まるなど、業績回復が後れる格好に。また、同州はシカゴ市場を中心に競争が激化しており、金利利鞘も他州比で低水準となっている。(表5)