7. 小売
 

 

中西部・イリノイ州の経済ホーム

 

目次

 

I. 中西部・イリノイ州の経済

 

II. 主要業界の動向

1. 建設機械

2. 工作機械

3. 機械部品

4. 鉄鋼

5. 電気・電子部品

6. 金融

7. 小売

8. 海運

9. 航空

10. フォワーダ−

11. 建設・不動産

12. 情報

13. 観光

14. 農業

 

III. 当地日系企業の経営課題

1. 税務・財務

2. 法務・雇用

 

IV. 中西部の社会・経済指標

議員・知事リスト

 2004年の米国は、原油高や金利上昇を理由に後半にかけて小売業の盛り上がりを欠いた。原油高によるガソリン価格の上昇は米消費者の財布を直撃した。米国の個人消費の増加額に占めるエネルギー関連の割合は2003年10月−12月期は3%だったのに対し、2004年の1月−3月期、4月−6月期は10%を超え、消費余力を押さえた。米金融当局が利上げに転じ金利が上昇したことで、住宅ローンの借り換えに急ブレーキがかかったことも小売業にとってはマイナス要因になった。全米の借り換え申請数は2004年5月のピーク時に比べ五分の一になり、低金利ローンに切り替えることで生まれた余剰資金を消費に回すというパターンが一巡した。ただ、減税政策や株式市況の回復の恩恵を最も受けてきた富裕層の購買意欲は2004年も衰えをみせず下支え要因になり、出費に慎重だった中低所得者との差が明確になった。
2004年の米国小売の動向

 米商務省によると、2004年の米国の小売業売上額(原数値)は約3兆9千億ドルと前年比約3.9%の伸びを示した。2003年の伸び率、5.2%を下回ったが、2001年の3.3%、2002年の2.6%よりは高い。過去5年間の伸び率でみると、2000年の8%をピークに急ブレーキがかかった後、2003年でやや持ち直し、2004年に再び下降線を描いた格好だ。業種別にみると、オンライン・ショッピングなど非店舗小売業の伸びが前年比23%と大きく伸びたほか、原油高でガソリンスタンドも同19・4%増えた。アパレル・装飾品も増えたものの、食料品や建築材・園芸用品が同減少した。

 

中西部の小売り

 シカゴの伝統的百貨店であるマーシャル・フィールズの経営者が2004年に変わった。中西部に本社を持つディスカウント大手のターゲットの傘下にあったが、米2位の百貨店であるメイ・デパートメント・ストアーズが最大手のフェデレーテッドと買収競争の結果、32億ドルで入手した。買収競争でマーシャル・フィールズの売却価格は高騰し、高い買い物をしたメイCEO(最高経営責任者)のジーン・カーン氏は2005年1月に辞任に追い込まれ、2005年に入りメイはフェデレーテッドに買収される。同じくシカゴの伝統的小売業者であるシアーズは約3年前に破産法を申請したKマートとの合併を2004年に決めた。両社とも過去に米小売業のトップに輝いた時期もあるが、ウォールマートに首位の座を奪われた格好だ。合併会社の売上高はウォールマートの約5分の一であり弱者連合とも呼ばれる合併だが、今後、合併・買収を繰り返して業界再編の台風の目になる可能性もある。(表参照)

 

業態別動向

高級店

 減税効果や株式市況の回復により、富裕層の購買意欲は衰えなかった。ただ、消費者の目は厳しく高級百貨店の勝ち負けが鮮明になった。勝ち組は、ダラスに本社を構えるニーマン・マーカスで、徹底した高級品路線と「インサークル」という会員組織を利用した得意客向けのマーケティング戦略で成功している。既存店ベースの売上高が前年比10%以上の伸びを示した月も多かった。米宝飾専門店のティファニーも通年決算は純利益が41%増と好調だった。日本での売り上げは低迷したものの、米国内店舗の売上高は富裕層の購買力に支えられクリスマス商戦も好調で、全店ベースで10%増えた。対して負け組は、サックス・フィフス・アベニュー。2003年にCEOが辞任しマネジメント体制の混乱がみられた。失地回復を急ぐものの、販売員増強のコストが重しになり営業減益となった。

百貨店

 消費の二極化が進むなか、百貨店は依然苦しい戦いを強いられている。高級品店とディスカウント・チェーンに挟まれ「中途半端」な位置付けのなか成長図が描けず、規模の拡大によって経費削減や仕入れの効率化を進めようとする動きが目立つ。2004年には、米百貨店最大手のフェデレーテッド・デパートメント・ストアーズ(本社、オハイオ州シンシナティ)が第二位のメイ・デパートメント・ストアーズ(本社、ミズーリ州セントルイス)を買収するとの観測が広がり、2005年3月に観測は現実のものとなった。売買総額は170億ドル、二社の売上高合計は約300億ドル、総店舗数は1000店近い。フェデレーテッドはメイシーズやブルーミングデールズを展開、メイはロード・アンド・テイラーやマーシャル・フィールズを展開する。大手2社の統合で寡占化が一挙に進む百貨店業界は、今後も引き続き再編の動きが進むとみられる。

ディスカウントストア(DS)

 自動車を除く米小売業市場規模の8%以上を占有するウォルマートだが、全社ベースの売上高は増加したものの既存店売上高の増加率が低下しており、業績に微妙な影が差した。5−7月期と8−11月期の米国内の既存店売上高は前年同期比それぞれ4%増、2%増。11月は単月で0.7%増と低い伸びになった。DSでは米第二位のターゲットはマーシャル・フィールズの売却で2004年の売上高は前年比減少したものの既存店売上高は順調に伸びている。デザイナーを使ったファッション性の高いPB(プライベート・ブランド)商品が人気を得ている。同社は今後5年間に600店以上の新規出店を計画している。ターゲットの店舗数は現在、1331店でウォルマートは3700店。

専門店

 2003年に定番回帰で急回復したギャップの2004年の業績は陰りがみえた。定番商品に毎年のファッション性を加味して手ごろな価格で提供するというのが同社の強みだが、同様の戦略をとる小売業者一段と増えている。不採算店の閉鎖を進めるとともに、2005年に日本に「バナナ・リパブリック」を出展し、海外市場の強化を図る。米国では35歳以上の女性を対象にした新コンセプト店の導入を予定している。

カテゴリーキラー

 80年代に登場し米小売業界を席捲したカテゴリー・キラーと呼ばれる大型専門店はホームセンター最大手のホームデポや家電最大手のベストバイは好調だが、そのほかで苦戦が目立つ。限られた商品分野で安値を打ち出す商法が、ウォールマートの幅広い品ぞろえに太刀打ちできなくなっているからだ。代表格として97年まで玩具販売首位だったトイザラスも66億ドルで投資ファンドグループに身売りを決めた。家電カテゴリーキラーの中堅、ウルティメート・エレクトロニクスは2005年に入り会社清算を発表した。ウォールマートは、玩具はもちろん、テレビ、パソコンなど家電販売店で扱う商品も幅広く販売しており、価格も安い。「同じ品質の商品をライバル社より2、3割安く販売できる」というウォルマートに対抗するためには、新たな付加価値が求められる。

オンライン店舗

 米調査会社のフォレスター・リサーチによると、2004年のオンライン小売売上高は1414億ドルと前年比23.8%増え、旅行関連を除くと890億ドルで同23.8%増と、小売り全体の4.6%を占めた。2003年の31%増という勢いはないが、依然として急成長が続いており、同社は2005年のオンライン小売売上高は同22%増の1724億ドルに伸びると予測している。2004年の傾向として、アマゾン・ドット・コムなどインターネット小売り業者と、ウォルマートなど小売り大手とのネット通販の競争が激しくなった。調査会社コムスコア・ネットワークスによると、クリスマス商戦の12月のサイト訪問者数はウォルマートが前年同月比58%、家電量販店最大手のベスト・バイが26%増と軒並み急増、対してアマゾンは5%増にとどまった。アマゾンの競争相手と食い込んできたのは、ネット小売り業のオーバーストック・ドット・コム(ユタ州ソルトレークシティ)だ。99年に創業し余剰在庫を買い取り安価でネット販売する価格破壊で急速に成長している。現在は北米市場での売上高がアマゾンの6分の一程度だが、3分の1に売り上げを拡大することを目標としている。

今後の動向

 全米小売業協会(NRF)は2005年の米小売売上高(自動車、ガソリンスタンド、レを示した。金利上昇やガソリン価格の高騰に対して給与の伸びは低く、消費者の購買力ストランを除く)は前年比4.8%増と、2004年の伸び率7%を大きく下回る見通しが鈍るとみる。高級品や建築材、園芸用品、家電などは力強い成長が見込める一方、ディスカウント・ストアは中低所得者の購買余力の落ち込みで苦戦すると予想している。

(表参照)