14. 農業
 

 

中西部・イリノイ州の経済ホーム

 

目次

 

I. 中西部・イリノイ州の経済

 

II. 主要業界の動向

1. 建設機械

2. 工作機械

3. 機械部品

4. 鉄鋼

5. 電気・電子部品

6. 金融

7. 小売

8. 海運

9. 航空

10. フォワーダ−

11. 建設・不動産

12. 情報

13. 観光

14. 農業

 

III. 当地日系企業の経営課題

1. 税務・財務

2. 法務・雇用

 

IV. 中西部の社会・経済指標

議員・知事リスト

 可決間近と言われるエネルギー法案において謳われるであろうエタノール工場への多額の補助金、また、農業法で決められている農家への所得支持政策などを見るにつけ、米国政府が農業・農産物を自国の戦略物資と位置づけていることは明確である。南米ブラジルが耕地面積を年々拡大している一方で米国の耕地面積はここ数年横ばいであるが、世界最先端の種子開発能力・農耕技術の安定的向上を背景に、米国は未だ世界最大の農業国の座を維持していると言える。2004年度時点で米国はコーン・大豆の生産量において世界一であり、それぞれ世界の43%、37%を占めている。また、コーン・大豆・小麦の輸出量においても世界一であり、それぞれ世界の64%、44%、25%のシェアを誇る。そんな農業大国・アメリカ合衆国において、イリノイ州はアイオワ州と並んで農業の中心地となっている。
1.米国の農業の現状

コーン
 2004年初頭の段階では、中国の在庫減、エタノールを中心とした国内産業用需要の加速などにより急激に増加する需要に対して供給が追いつかないのではないか、という考えが一般的であった。そういった思惑による投機筋の買いによって2004年序盤はコーン相場が上昇の一途を辿り、1月時点でブッシェル(約25キログラム)辺り250セントであったコーン価格(シカゴ期近物)は4月に入ると340セントを付けるに至った。しかし、6月に入ると状況は一転し、コーン価格はその後著しく下落し続けることとなる。原因は、誰もが予想しなかった程の米国産コーンの大豊作。史上記録を塗り替える大豊作となった前年度クロップの生産量と比べても単収(1エーカー辺りの平均収穫量)は13%近くも上昇し、生産量合計は何と4,300万トン以上も増加したのである。作付け期の4月から生育期を通じて適度な雨と涼し目の気候に恵まれ、6月に入った頃から大豊作の予想が少しずつ相場に織り込まれ、投機家の思惑による売りも加わって相場が下げ続け、2004年末近くには遂に200セントを割り込むこととなったのである。
 しかし、中国の経済成長に伴う穀物需要の増加、米国でのエタノール生産の加速による需要増を中心に、世界のコーンに対する需要は着実に増加している。一方で、供給面はというと、ここに来て益々米国産のみに頼らざるを得ない構造となってきている。この状況で、米国で一度大旱魃でも起きようものなら、世界的な食糧危機に繋がる可能性も有り得るのではと懸念される。

大豆
 2004年度は大豆にとってもコーンと同じく大豊作の年となった。前年度は生育期後半に訪れたホット&ドライにより1996年以来となる不作となり、国内在庫がほぼ底をついて、大豆価格(シカゴ期近物)は2004年初頭、ブッシェル辺り10ドルを付けるに至った。しかし夏前からはコーンと同じく豊作を織り込みながら徐々に値を削って行き、収穫期には5ドル台前半と年初の約半値にまで値を崩すこととなった。大豊作により前年度と打って変わって潤沢な国内在庫を持つことになった米国産大豆だが、一方で懸念材料も発生している。2004年度秋に何度となく到来したハリケーンにより、「さび菌」と呼ばれるマメ科植物の葉に繁殖する病原菌が南米から運ばれ、米国でその存在が最近発見されたのである。この疫病に見舞われた畑での被害の程度は、生育中のどの段階で感染するかにもよるが、最大で80%の単収低下を招くとも言われている。病原菌の被害を恐れるあまり、2005年度は大豆の作付け面積を減らす農家が多いのではという予想も出ており、実際の被害発生による収量の低下と、リスク回避のための作付け面積減少が共に懸念されるところである。

 

2.イリノイ州の位置付け

 中西部は一般にコーンベルトと呼ばれ、米国におけるコーン・大豆の生産の中心となっているが、その主な理由としては、肥沃な土壌・農業に適した天候などが挙げられる。加えて、輸出港への輸送手段に恵まれたこともまたこの地で農業が栄えた理由の一つである。すなわち、最大の輸出港であるメキシコ湾へは、イリノイ川・オハイオ川・ミズーリ川などを経由してミシシッピ川へと運ばれ、安定的に港へと輸送される。また、東海岸へも五大湖・セントローレンス水路を利用しての大量輸送が可能である。イリノイ州は中西部の中でもコーン・大豆の生産量においてアイオワ州と1,2を争う程の大生産地であり、2004年度には全米の約18%のコーンを生産して、(アイオワ州に次いで2位)、大豆は全米の約16%を生産して1位となっている。また、輸出用のコーンの約50%はアイオワ州とイリノイ州で生産されていると言われている。

 

3.シカゴでの先物取引発達の背景

 シカゴは元々、米国東部の工業地帯と中西部の穀倉地帯、大平原牧草地帯の接する要衝に位置し、また五大湖の底辺にある終着駅としての立地条件を備えていた。1825年にエリ運河が開通し、シカゴを経て中西部へと至る新しい径ができ、その後イリノイ・ミシガン運河が開通。その後鉄道網敷設も加速され、1853にはミシガン・サザン鉄道とミシガン・セントラル鉄道が連結されてシカゴは開拓途上の中西部農業地帯の穀物運輸上の心臓部となったのである。しかし面白いことに、シカゴは交通の要衝とは言え、その地形・地質は陸上の運搬については最悪であった。シカゴ周辺の地質学的基盤はNiagara Formationと呼ばれる石灰岩の分厚い母岩からなり、その層の上を、氷河の残した不浸透で水はけの悪い軟泥層が覆っている。その上に作られた道路は、夏には埃が舞い上がり、冬には路面が凍結、春には一面水浸しになったという。交通の要衝であったという事実以外に、こういった初期の運搬事情の悪さもまた、シカゴでの「先物」という形の取引形態の発達を促したと考えられる。

(表参照)