III. 当地日系企業の経営課題
 

 

中西部・イリノイ州の経済ホーム

 

目次

 

I. 中西部・イリノイ州の経済

 

II. 主要業界の動向

1. 建設機械

2. 工作機械

3. 機械部品

4. 鉄鋼

5. 電気・電子部品

6. 金融

7. 小売

8. 海運

9. 航空

10. フォワーダ−

11. 建設・不動産

12. 情報

13. 観光

14. 農業

 

III. 当地日系企業の経営課題

1. 税務・財務

2. 法務・雇用

 

IV. 中西部の社会・経済指標

議員・知事リスト

1. 税務・財務
 今後特に注目すべき2004年米国雇用創出法の米国事業への影響に関しましてご説明させていただきます。

 米国議会は、大統領選挙を控えた休会直前に、1986年法以来最も包括的な改正を含む税法である「2004年米国雇用創出法」を承認しました。この税法は、昨年10月22日にブッシュ大統領の署名を得て成立しましたが、米国で事業を行うほとんど全ての企業に影響を及ぼすものと思われます。
 新法には減税項目と増税項目が含まれます。重要な項目を幾つか挙げれば次の通りです。

減税項目

・ 国内製造者および生産者のための控除を新設。
・ 国外留保利益を低税率で本国還流できる一度限りの機 会を提供。

増税項目

・ 輸出業者に対する長年にわたる優遇税制の廃止。
・ 従来以上に厳しい税務上の開示・報告ルール、およびそれに違反した場合の厳しい罰則の新設。
・ 企業幹部向け繰延報酬制度にかかわる従来の柔軟性を制限。

 新法は、企業の税務・財務担当エグゼクティブが早急に対応すべき多くの問題を提起しています。例えば:

1. 従来の輸出優遇税制から恩恵を受けていた企業にとっ て、新法の税務および財務諸表に与える影響は何か。

2. 新たな生産者控除から得られる税務・財務諸表上の恩 恵は何か。また、それら恩恵と、事業上の要請をどう バランスさせるか。

3. 海外留保利益の米国還流に関して、税務上および財務上の得失は何か(財務諸表への影響など)。

4. 繰延報酬制度に関わるより厳しいルールに対応し、かつ人材確保に有効な報酬戦略を維持するためにどのよ うな措置を採るべきか。

5. より厳格な税務上の開示・報告ルールに対応するため、どのような社内システムおよび手続きが必要か。

6. これら諸問題にどれだけ迅速に対応しなければならないか。そして新法のもたらす機会とリスクを評価する 最も良い方法は何か。

 以下ではこれらの問題を中心に考察します。

 

輸出優遇税制の廃止、および国内製造に対する広範な優遇措置の新設

 新法は、輸出販売に対する現行の優遇税制措置を、2年間にわたって段階的に廃止します。一般に、2007年までには、米国の輸出販売から得られる所得は全額課税対象となります。
 また、新法は、広範囲の国内製造者および生産者に対する特別控除を段階的に導入します。伝統的な意味での国内製造業者以外の企業でも、新控除の恩恵を受ける可能性があります。例えば、米国で映像制作[映画等]、発電、ビル建設を行っている会社は適格と認められる場合があります。法律が新しいため、控除の恩恵を受けることができる適格生産活動の定義はすこし不明確ですが、広範囲にわたる活動が適格となることは明らかです。
 また、事業運営を変更することによって新控除の恩恵を高めることができるかどうかについて、各企業が検討すべきであることも明確です。そのような変更が製造プロセスやサプライ・チェーンに与える影響も検討・評価すべきです。さらに、全ての企業は、所得および経費を、新控除適格事業活動と非適格事業活動に適切に配付するための社内システムおよび手続きを整備する必要があるでしょう。
 新控除は、「適格国内生産所得の3%」という比較的低い率で2005年から開始されますが、その後段階的に増率し、2010年以降は9%に達します。従って、適格会社における新控除の重要性は漸増します。これと対照的に、輸出優遇税制の段階的廃止は、輸出業者の税債務および実効税率を漸次増加させることになります。(詳細は次の記事をご参照下さい。)

 

海外留保利益の米国送金に関する優遇措置

 新法は、海外子会社の留保利益を実効税率5.25%で米国へ送金できる限られた機会を提供しています。制度の利用はオプショナルですが、実行に際して幾つかの制限があります。例えば、軽減税率を適用できる海外留保利益は、その会社の過去の本国送金履歴に基づいて制限され、またその送金は適切に承認された投資計画に基づいて、米国内で再投資されなければなりません。
 海外留保利益を本国に送金すべきか判断するためには複雑な検討を要します。例えば、国外所得あるいは源泉税の存在、国外関連者間の効果的な資金移転の可能性などを判断するために、広範な検討が必要です。しかし、多額の利益を留保する海外子会社を持つ企業にとって、利益の本国送金から得られる便益は大きいと思われます。企業は、その全世界ベースの資本構造およびキャッシュフロー(資金コスト)を、税効率がよい方法で最適化するための、一度限りの機会が与えられているといえましょう。
 この機会は限られているため、企業は、海外子会社からの配当決議および支払いに付随する税務、企業統治、取引実行および財務上の諸問題に早急に対応する必要があります。多くの場合、これらの利益に対する繰延税金は計上されていないため、利益送金に関連した財務諸表上の影響も考慮しなければなりません。

 

税務上の開示および報告

 新法は、IRSが過度にアグレッシブであると判断した取引に関する規定を幾つか含みますが、その規定は広範で、一般の通常の事業取引にも影響が及ぶ可能性があります。これら条項の内、最も重要なものは次の通りです。

・ 連邦所得税申告書においてある種の取引の存在を開示 しなかった場合、最高 $200,000ドルまでの罰金科料、および
・ IRSから受けたある種の罰金について、SECに対して開示することの義務づけ(SEC登録会社のみ)。

 この非開示に関わる罰金は、その取引が税務申告書上正しく計算されている場合でも科せられることがあります。
これらの条項は過度にアグレッシブな取引を対象としますが、通常の事業取引の多くもこれら条項に基づいて開示しなければなりません。罰金の大きさ、および株主や証券アナリストに対する悪評を考えると、全ての納税者、特に大規模で複雑な企業は、関連取引の把握、評価、文書化、および該当する場合にはそれらを開示するための社内手続き、および統制の状況を確認する必要があります。

 

企業幹部への報酬

 従来、企業とその幹部は、企業幹部に対する報酬の一環として、柔軟に税制非適格繰延報酬制度を設けることが出来ました。新法はこの柔軟性の多くを制限し、報酬原資の調達、分配および選択について、新たな厳しいルールを設けました。
 例えば、新法は、現行の多くの繰延報酬制度において一般的である次のような規定を禁止、または厳しく制限しています。

・ 比較的小額の罰金を支払うだけで繰延報酬の前倒し分配を受けることができる規定(いわゆるヘアカット 条項)、
・ 特定の企業幹部が退職直後に繰延報酬の分配が受けられる規定、
・ 雇用者が、オフショア・トラストを利用して繰延報酬の原資調達を行うことができる規定、および、
・ 分配の時期やその形式を、制度参加当初の選択に拘らず変更できる規定。

 また、新しい規則は、会社と外部取締役や独立契約者との間の繰延報酬制度にも適用されます。
 結論的には、「殆ど全ての非適格繰延報酬制度は、完全に制度変更しないまでも、修正する必要がある」ということです。修正された制度はその会社の報酬戦略、および他の現行報酬プランと整合したものでなければなりません。ただし、企業は、IRSがガイダンスを発行するまでは現行の報酬プランを修正すべきではありません。なぜなら、不用意な修正は現行プランで繰延べられた報酬に対する課税という結果を招く可能性があるからです。
 新法は2005年1月1日から開始する課税年度に繰延べる金額に適用されます。2005年の給与繰延べに関わる諸選択は、支払い時期および形式を明確にして、2004年末までに行わなければなりません。

 

終わりに

 新法は、過去何十年にわたって成立した税法の中でも最大かつ最も複雑なものです。上述の変更点に加えて、ある種のパートナーシップ取引、法人の設立および合併取引、ある種のリース取引、およびその他国際取引に関する条項に関して、重要な変更が行われています。
 新法がもたらす複雑さと諸機会に対応するためには、短期的な課題と同時に、長期的な税務戦略に取り組む必要があります。各企業は、新法が自社の実効税率、キャッシュフローおよび財務諸表に与える影響を迅速に評価する必要があります。多くの場合、企業は、向こう数ヶ月の間に、将来、年単位で影響を持つと思われる決定を行う必要があると思われます。
 新法の持つ連邦税、州税、および国際税務上の影響にスムーズに対応するため、税務部門と事業部門間の積極的な連絡が非常に重要な意味を持つと思われます。税務、営業、会計、財務、人事その他の関連部門間で総合的・包括的アプローチをとることができる企業は、新法の複雑さに成功裏に対処する上で有利な立場にあるといえます。