子供を学校に入学させる際に必要な
予防接種の数は、米国の場合、日本に
くらべて多いことはよく知られています。
日本では、全ての接種を受けて渡米して
きたのに、なぜこんなに必要なのかと
思われる方が少なくありません。
また、一度にこんなに何本もの接種を
受けて安全なのかと、疑問及び不安感
をもたれるご両親もおられる事でしょう。
接種の数が多ければ多い程、その時の
医療費の請求を受けて「アメリカの医
療費は高いと聞いてはいたが」とあら
ためて驚く方もいらっしゃいます。
しかし、これらの予防接種を全て済ませな
ければ就学を拒否される場合もあり、
渡米後はなるべく早く接種を終える必
要があります。
日本と米国の
予防接種の比較をしながらご説明した
いと思います。
■ポリオ(OPV:Oral Polio Vaccine)
| 日本 | 米国 |
| 1歳から2歳までに合計2回 |
月齢4ケ月までに2回
18ケ月までに3回目
4歳以降に4回日の合計4回
|
日本では2回だけの投与方式で1986
年以来、自然型のポリオの発症は報告
されておらず、当分のところこの接権
体系を変更する予定はありません。
しかし、毎年減少しつつあるとはいうも
のの、まだ多くの諸国ではポリオが報告
されています。
ゆえに世界保健機構
(WHO)では、年長児へのポリオワクチン
迫加を薦めています。
米国では1979年以来自然型のポリオ
は報告されていませんが、生ワクチン
自体によるポリオが毎年数例報告され
ています。
その為に子供さんにはかわいそうな事
ではありますが、これから
は生ワクチンを止めて不活性型ボリフ
の筋肉注射を4本うつという形に変わ
って行く事になります。
しかし、米国で
は新しいワクチンの開発が進んでおり、
近い将来ポリオは他の予防注射に混合
される予定です。
なお、合計で4本とされてますが、必ずしも4本でなければなら
ないのでは無く、接種を受けた年齢に
より少なくてもかまわないという例外
もありますので接種法は掛かり付けの
小児科医に相談して決める必要があり
ます。
しかし、渡来が決まった時点でお
子さんが4歳以上であれば日本で出国
前に受けてこられると便利だと思われ
ます。
■ジフテリア、破傷風、百日咳
(DTD:Diphtheria, Tetanus, Purtussis)
| 日本 | 米国 |
●第一期は生後3−48ケ月に3-8週間隔で3回
●第二期は一期終了後1年後に1回
●第三期は12歳に達する年に1回
|
●第一期は生後2ケ月から2ケ月ごとに3回
●第二期は一期終了後1年後に1回
●第三期は4歳から6歳の間に1回
|
顕著な違いはアメリカの方が第一期
と第三期の時期が日本より早いという
ことだけで、米国でも日本と同じ様に
1997年度より副作用の少ない無菌体百
日咳ワクチン(DTaP)を使用した三種混
合接種を第一期から接種出来るように
なりました。
このDTaPの導入により、
今まで多くみられた接種後24時間以内
の発熱や接種局部の腫れ等という副作
用が激減しました。
米国では長期予防医学の観点から7
歳以降の小児には二種混合(td)を10年
ごとに接種していく様指導しています
が、一旦学校システムを離れてしまっ
た者に対する接種率はかなり低いのが
現状です。
■麻疹、おたふく、風疹
(MMR: Measles, Mumps, Rubella)
| 日本 | 米国 |
●麻疹は生後12-75ケ月の間にl回
●おたふくかぜは任意接種(実質接種率約20%)
●風疹は12歳から15歳の女子に1回
|
●新三種混含のMMRを生後12-15ケ月の間に1回
●4-6歳の間に2回目の接種 |
日本では1989年4月より任意で始ま
ったMMRのワクチンでしたが、ワク
チンによると考えられる接種後の無菌
性髄膜炎の多発により、1993年4月に
中止されました。
その後は他のワクチ
ンに対する不信感及び任意接種という
ことも手伝い、残念ながら日本の小児
のおたふくかぜの罹患率は先進国社会
の中ではもっとも高いものとなってい
ます。
渡米されて当院に来院される小
児の半分以上がおたふくかぜを罹患し
ているという事実にはおどろかされま
す。米国ではおたふくによる合併症(無
菌性髄膜炎、難聴、睾丸炎、卵巣炎)
を防ぐという意味も含めて、接種は義
務化されてます。
米国のMMRも現在のMMR-U型と改
良型を使用する様になってからほとん
ど副作用は無くなり、安心して接種に
使用されています。
しかし、この新型
MMRの導入後数年後の1990年に米国
の大都市で麻疹が大流行し、医療関係
者をおどろかせるという事態が起こり
ました。
この大流行の原因追跡調査の
結果、MMR-U型1回の接種では生涯免
疫を得る率が低いという事が確認され
ました。
この麻疹大流行後は、2本目
のMMR-Uを乳幼児に接種する事によ
りかなり高い生涯免疫抗体値を得られ
る事が実証され、また最近の研究では
大学入学時に3本目を接種した場合も
っと高い生涯免疫を得られるのではな
いかという意見も出ており、現に米国
の数州では3本目の実施を考えています。
■ヘモフイノレスインフルエン
ザb菌(HIB: Haemophilus influenzae b)
| 日本 | 米国 |
| 接種していない |
月齢2ケ月、4ケ月、6ケ月、と
12-15ケ月の4回 |
名前にインフルエンザという言葉か
入っている為によく冬に流行るウイル
ス性インフルエンザと誤解されがちで
すが、これは細菌性インフルエンザ菌
で特に6歳以下の集団生活内の小児に
脳膜炎や髄膜炎を起こしやすい病原菌
です。
1980年代に予防接種の開発およ
び施行されるまでは全米の小児科病院
の集中治療室には必ずといってよい程、
この菌に侵された子供が月に一人は入
院していた程、流行性の強い病気でし
た。
しかし、接種開始後10年目の1997
年には全米でたった1170人、そして去
年1998年には1075人と罹患率は激減し、
近い将来この病気はアメリカから撲滅
されると予想されています。
この病気はアメリカだけのものでは
無く日本も含め世界中で診られますが、
フランスや日本の様に罹患率の低い先進国
では予防接種を取り入れていないこと
が多い様です。
副作用は他の注射に
比べて極端に少なく安全性の高い予防
接種です。
この病気に罹りやすい5歳
以下には義務づけられていますが、イ
リノイ学校保健法(6歳以上)では義
務づけられていません。
■B型肝炎(HB:Hepatitis B)
| 日本 | 米国 |
| B型肝炎e抗原陽性妊婦からの
出生児に対して、出産直後、
月齢1ケ月と5ケ月の合計3回 |
抗原の有無に関わらず、出産直
後、月齢1ケ月と6ケ月の3回 |
B型肝炎は乳児期に感染すると大人
が罹るのに比べて、かなりの高率でキ
ャリア化(保菌者化)します。
それらの保菌者が成人した段階で慢性肝障害
を起こす率は25%以上と高くなります。
慢性肝障害は後に肝硬変及び肝繊ガン
へと変化していく可能性が高く、この
慢性肝障害を持つ者が肝臓ガンを起こ
す確率は普通の人に比べて約300倍の
リスクといわれています。
これらの病
気による1997年度の全米での必要医療
経費は500億ドルでした。それだけに、
米国では予防医学として1990年より新
生児への接種を始めました。(注:そ
れまでは米国でも1982年から日本と同
じ様に、抗原を持った妊婦の出生児だ
けに接種を限っていた)
1990年の接種を始めた当初は新生児
に限られていましたが、近年米国病気
コントロールセンター(CDC)の介入に
より、接種を受けていない学童児にも
義務づけされる様になりました。
これ
には副作用はほとんど無く接種後に微
熱をだすことがまれにある程度です。
因みにイリノイ州では1996年の州議
会の法案成立による学校保健指導法で、
5年生までに3本の接種証明がなければ
登校出来なくなりました。
しかし、現在1998年の春の州議会で、
シカゴ郊外ノースブルック市の接種反
対グループがこの法案を阻止する訴訟
を提出しているのでまだ徹底した行政
化はされておらず、各学校の判断に委
ねられていますが、行政化される可能
性は高くなっています。
なお、この接
種は、数ある予防接種の中でもっとも
副作用の少ないワクチンとされていま
す。
ただ生涯免疫獲得率は証明されてお
らず、当分の間は接種後5-10年ごと
に抗体検査をして追加接種(ブースタ
−)の必要性の有無を調べることが重
要でしよう。
■まとめ
米国の製薬会社はワクチンの研究開
発段階で、自社で開発しているワクチ
ンが他社の既製のワクチンとの併用性
及びその安全性を研究しながら開発を
続けてきました。
現在認可されているワクチンの極ま
れな例外を除くと、ほとんどのワクチ
ンは接種の部位さえ変えれば安全に併
用することが出来ます。
始めに述べたように、「アメリカの
小児科に行ったら5本もいっぺんに予
防接種をさせられたが大丈夫でしよう
か」という質問電話をもらう事があり
ますが、これはこちらでは問題視され
ることでばありません。
最後になりましたが、もし米国での
注射が不安でしようがないというので
あれば、可能な限り渡米される前に次
の接種を済ませて来ることをお薦めします。
| B型肝炎 |
小児の年齢にかかわらず、
B型肝炎は3回の接種なので出国6ヶ月前には始めること |
DTP | 4歳以上で7歳以下の子供
で第二期までしか受けてない場合はDTPを1回接種。7歳以上の子供はDTPの代わりにTdを接種
|
麻疹 | MMRは日本には無いので、
最低でも麻疹一本は受けてくること |
ポリオ | 年齢に関わらず、学童児は
もう1回飲んで来ること。乳幼児の場合、
2本目を飲んでから1年経過している場合はもう1本飲んでくること |
水疱瘡 | イリノイの学校保健法で
は任意の予防接種だがこの2〜3年で曼
務化される可能性があるので、時間に
余裕があれぱ接種してこられればよい。
アメリカではこの予防接種は自己開;
をせず、日本のOka株のワクチンを1
入して使用している |