シカゴ美術館の歩き方
シカゴ美術館は観光では外せない人気スポットですが、回り方に悩まれる方もいらっしゃると思います。この機会に西洋絵画史の流れに沿った歩き方を紹介したいと思います。
1 古代( 〜4世紀)
まず正面でなく新館の北入口から入り、中庭周囲151〜154 ・150室を観ましょう。大きな目が特徴のメソポタミア、直立不動のエジプト、単純化されたエーゲ、躍動感のあるギリシャ・ローマまで、各時代の彫像の流れが掴めます。絵画では、ビザンティンのモザイク画が展示されています。
2 中世( 4〜14世紀)
1周回ったら143〜140室( 東南・南アジア)を通って左に曲がり、130〜134室( 東アジア)を超えて135階段室で2階に上がりましょう。236〜238室には中世からルネサンスまでの展示があります。ほとんどがキリスト教に関わるもので、金色の背景に平面的で無表情な中世の描写法から、少しずつ立体的で人間的なルネサンスの描写法に移っていくのが分かります。象徴等で絵画の意味を分かり易くする工夫も見られます。
3 近世( 14〜18世紀)
戻って234・206室を抜け右に曲がって、中階段周囲202〜236室を回りましょう。ここで近世〜近代の流れが掴めます。まず人間視点に立ち返ったルネサンスではボッティチェッリやティントレットなどの絵が、誇張など行き過ぎ感のあるマニエリスムではポントルモやエルグレコなどの絵が楽しめます。この時代に神話をテーマにした絵画が復活しました。続いて宗教改革後のバロック絵画が展示されています。偶像を禁じたプロテスタントと絵画により信徒を増やそうとしたカトリックのせめぎ合いの中で、スペインではベラスケスの宮廷画やコタンの静物画、オランダではレンブラントの肖像画やルーベンスの歴史画、フランスではプッサンの歴史画など、多くの傑作が出ました。この時代は劇的な絵画が多いのも特徴です。次代のロココ期では、行き過ぎた貴族趣味のヴァトーやブーシェの絵や、ロマン主義への架け橋となったゴヤの絵が楽しめます。
4 近代 (18〜20世紀)
中階段周囲を半分ほど回ると近代に入ります。18世紀には革命後のフランスが美術の中心になり、輪郭重視のダヴィッドやアングルのような新古典主義と色彩重視のドラクロワやターナーのようなロマン主義の争いや、そこから離れてありのままを描くクールベやコローなどの運動が起こりました。印象派の父と呼ばれるマネや、精神性を重んじたモロー、物語性重視のロセッティ、印象派に分類されるドガなどの絵を経て、201室に入ると19世紀後半の印象派です。さらに奥の240〜248室にはその後の展示があります。単なる写実から離れ、原色を巧みに使って一瞬の印象を表現する試みを原点に、様々な表現法に分かれていきます。ここには皆さん御存知の画家 (ルノアール・モネ・スーラ・セザンヌ・ゴッホ・ゴーギャンなど)が多いと思います。ちなみに米国の美術館に印象派の絵画が多いのは、フランスでは売れなかったために、画商が起死回生を図るべく売りに来たためです。これが大成功、現在の評価に繋がります。シカゴではパーマー夫人等が多く買い入れ、シカゴ美術館に展示されています。
5 現代( 20世紀〜)
249階段室で左に曲がり、カフェを通って廊下を奥まで進み階段で新館3階へ、391〜399室を回りましょう。ここには20世紀前半の絵画があります。キュビズムやフォーヴィズムと呼ばれる、感覚を重視して形や色の表現を追及した作品他が展示されています。ピカソやマティスなど未だ元の形や色を留めている絵から、モンドリアンやカンディンスキーなど抽象的な絵、そしてダリやマグリットなど心象風景を描いた絵まで、バラエティー
に富んでいます。新館2 階へ下りれば、290〜299 室に20 世紀後半の絵画があります。描いている時が芸術であるというポロックのアクションペインティングや、絵の中に吸い込まれそうなロスコのカラーフィールドペインティング、鵺的なウォーホルのポップアート等、芸術とは何かを問い掛けてくる作品が目白押しです。
最後に
ここでは紹介しませんでしたが、アメリカ絵画( カサット・サージェント・ホッパー他)やアジア美術( 陶磁器・浮世絵他)などもお勧めです。また、歴史的な出来事を通して各時代・地域がどう影響し合っているかを知れば、さらに面白く鑑賞できます。専門家ではないので細かな内容に誤りがあるかも知れませんが、参考にして頂ければ幸いです。