「シカゴ建築バーチャルツアー」開催報告
本年度文化部主催の最後のイベントとなる「シカゴ建築バーチャルツアー」が12月10日(金)の夕刻5時半から約1時間半にわたり開催されました。
シカゴは世界で名だたる建築の町として広く知られています。通常では、有名な建造物を順々に見て回るツアー実施がされるところ、昨年から続くコロナ禍の影響から、7月の「美術館ツアー」と同じく、今回の建築ツアーもオンラインでの開催となりました。しかしながら、実際の建築巡りの場合は参加人数の制限がありますが、バーチャルツアーではより多くの参加が可能となり、今回も100名以上のご登録の下、盛況なイベントとなりました。
今回講師をお務めいただいたBob Karr氏は、日本の大学への留学経験があり、その後弁護士として長く日系企業での仕事を通じて、日本文化、歴史、そしてシカゴと日本の建築史に精通した素晴らしい見識を培われてこられました。又、解説の中で触れられたJackson Parkにある「The Garden of the Phoenix」のプロジェクト・P120 の共同代表としても活動されています。
資料では、シカゴ市を大きく北、南、西の3地域に分け、又時代をPart Aの1776-1872年
(アメリカ建国からシカゴ大火まで)とPart Bの1872-現在(Jackson Parkを中心とした時代)の二つに分け、更に、主な年次として1803年(フォートディアボーン シカゴModern Historyの始まり)、1871年(シカゴ大火発生)、1893年(シカゴ万国博覧会開催)と最後の1933年(2回目の万国博覧会開催)の4時期に焦点を合わせて話が進められました。更に、シカゴ建築史については、日本との繋がり、特に、世界的建築家のフランク・ロイド・ライトが日本訪問を通して宇治平等院鳳凰堂に代表される日本固有の建築様式から大きな影響を受け、その後アメリカの新たな建築スタイル(Prairie Style)を確立したこと、更には、帝国ホテル(旧本館-通称ライト館)の設計に関わり、奇しくも、1923年9月1日の開業レセプション直前に関東大震災が発生、多くの建物が倒壊する中、被害が最小限にとどまったライト館がこの歴史的大災害を乗り越えたことでその建築設計の素晴らしさが広く知られる事となったエピソードの紹介もされました。加えて、この旧本館を高校生として修学旅行中に訪れた今日本を代表する建築家の安藤忠雄氏がその後建築家を志すきっかけとなり、弟子のタイ人Kulapat Yantrasast氏が現在P120プロジェクトの一員としてThe Garden of the Phoenixの再興デザインに関わっていることなど、近代から現代にいたる日米建築史をめぐる強い繋がりについて語られました。
同時に、江戸幕府から明治維新への歴史的転換期に、ここアメリカでも南北戦争、リンカーン大統領暗殺等の重要な史実と併せ、1853年の黒船来航から1872年の岩倉使節団のアメリカ来訪(シカゴ大火の翌年)を通じて日米交流が始まり、その20年後1893年の万国博覧会での鳳凰殿建設と博覧会開催後、天皇から寄贈されシカゴ市と日本との友好関係が築かれていった歴史の流れになっています。P120プロジェクトはこの万国博覧会開催から120年(還暦60年の2周り)にあたる2013年に鳳凰殿跡地の復興を目的に組織され、本所創立50周年事業の一環として桜の木50本が寄贈されました。又、オノヨーコさんデザインの「Sky Landing」のオブジェも復興と世界の平和への願いを込めて設置されています。2025年にはオバマ前大統領のObama Presidential Centerが完成予定とのことから、今後シカゴを代表する観光スポットになるものと各界からの熱い視線が注がれています。本所はこのP120プロジェクトの趣旨に賛同し、来る2026年の創立60周年に向け、新たに60本の桜の木を寄贈し、既に植樹されている多くの桜の木と併せ、この地域で桜の木に代表される日本とその文化を訪れる多くの人々に知って貰える機会となることを目指しています。
その様な観点から、今回の「シカゴ建築バーチャルツアー」は、日米の文化交流促進の上で、シカゴ、日本の建築史に留まらず、両国の近代史にも光をあてた大変意義あるイベントとなりました。今後更なるプロジェクトの進展に向けて、会員はじめ多くの方々からのご理解とご支援を切に願う次第です。
- 日時
- 12月10日(金)5:30pm–7:00pm
- 参加者数
- 101名
- 参加費
- JCCC会員(会員企業にご勤務の方も含む) 無料・非会員 $30
- 講師
- Robert Karr氏(P120共同代表)