JEEP報告 ロバート・ハリス


Frank C. Whiteley Elementary School, Community Consolidated School District 15
Principal, Mr. Robert Harris

原文(English)

6月に日本から帰国して以来、友人や同僚からプログラムや日本の様子について聞かれる度に、私の人生の中で最も素晴らしい経験の一つだったと答えています。もし、4年前に「日本に行きたいですか?」と聞かれていたら、私は「いいえ、結構です。」と答えていたと思います。しかし、Frank C. Whiteley Elementary Schoolの校長に就いて以来、日本からの子供たちが私の学校に入学する姿を目の当たりにし、彼らの文化や教育制度について興味を持ち始めました。今回、この素晴らしい機会を与えられ異国の地に行き、その文化を見たり学んだりすることは目からうろこが落ちる思いで、毎日が驚きの連続でした。この経験を通して私が感じた日本の印象を一言で表現すると、「Harmony(調和)」だと思います。

出発の日はオヘア空港でエレンとアケミと合流し、JCCCの三谷事務局長の見送りを受け、航空会社の方に案内されたラウンジで搭乗を待ちました。この時すでに素敵な旅の始まりを予感させました。エレンとアケミとはオリエンテーションで一度会ったきりだったので、ラウンジでの待ち時間はお互いを知る良い時間となりました。このような素晴らしい機会に恵まれ、さらに2人の素敵な教育者と出会い、旅を共にするというのは非常に幸運なことでした。人生の中で最も長い飛行時間は思っていたよりも早く過ぎ、成田空港に到着するとすぐに品川のホテル行きのバスに案内されました。バスの中から見る景色は、交通量が多く混雑していましたが、その中でも人々のスムーズな動きに「調和」を感じました。ホテルに到着すると、翌日に備えてゆっくり休みました。

翌朝、他のプログラム参加者と一緒に朝食をとりました。この時が初めての顔合わせだったので、それぞれ自己紹介を交えながら歓談しました。プログラム参加者はアメリカとベルギーからの計28名でした。朝食後オリエンテーションに向かう途中、ふと外を見ると多くの人が忙しなく歩いていました。アメリカで見かける光景とは違い、人々がお互いぶつかることなく別々の方向へスムーズに流れる情景はまさに「調和」を強調していました。オリエンテーションでは、IEJスタッフの紹介を受け、プログラム中行動を共にするグループのメンバーも紹介されました。IEJの代表の方のお話を聞き、更にこのプログラムの素晴らしさを確信しました。日本の感想を聞かれたときに必ず答えることの一つは、どのスタッフの方も予想以上にとても親切だったということです。プログラム中、私たちはどこに行ってもセレブのように待遇されました。オリエンテーション終了後、私たちは最初の学校訪問に向かいました。広尾学園中学校と高等学校は、とても綺麗な学校で教師や生徒たちは私たちを温かく迎えてくれました。授業の様子を見学させていただいた時に、教師も生徒もほぼ英語で会話をしていたので驚いていると、そこはインターナショナルコースだったという説明を受けました。数人の教師と生徒たちとの質疑応答の時間を設けていただき、更に日本の教育への理解を深めました。

学校訪問の後は自由時間だったので、渋谷周辺を散策しました。世界で最も忙しい交差点と呼ばれる渋谷のスクランブル交差点を見に行きましたが、ここでもまた「調和」が強調されていました。青信号になるまで誰一人交差点を渡らず、全員が交通ルールを守っていました。これだけの人が規則正しく同じように行動できることに驚き、アメリカ人にも見習ってほしいと思いました。

翌日の立会小学校訪問は特に印象に残った経験の一つとなりました。校長先生と教育関係者の方々と挨拶を交わした後、校庭で全校生徒からの礼儀正しく友好的な歓迎を受けました。一緒に給食を食べるクラスへ案内される途中、生徒たちから色々な質問を受けました。なるべく伝わるように答えようとしましたが、なかなか上手くいかず、その時初めて同じ言語を話さない人に伝えたいことが伝わらないという苛立ちを覚えました。これは、ホフマン・エステーツにある私の学校に入学してくる日本からの家族や生徒たちが経験するのと同じことだと実感しました。デモレッスンをしていた他の参加者たちも同じような体験をし、レッスンが終わった後は皆とても疲れていました。同じ言語を話さない生徒たちに何かを伝えるということは非常に難しく、努力が必要であると改めて思い知らされました。給食の時間になると生徒たちの協調性が発揮されていました。自分達で机を動かし、ランチョンマットや食器を各自用意する動きはとてもスムーズでした。給食エプロンを着た4人の生徒が配膳をし、全員に食事が行き渡るまでは誰一人食べ始めず、全員の食事の用意が整うと合掌をし、一斉に食べ始めました。驚いたことに、エレンと私以外の全員が給食を全部残さず食べていました。給食中に生徒たちと話をしたり、生徒同士のやり取りを見るのは面白かったです。また、先生が同じ教室で生徒たちとランチを一緒に食べるということにとても驚きました。これはアメリカの学校では絶対に見ない光景です。その日の夜は、楽しみにしていた着物体験でした。着付けをしてくださった鈴乃屋の方たちからは丁寧な待遇を受けました。綺麗に着付けをしてくださり、短い間でしたがとても特別な気分になりました。

次の日は新幹線で広島へ移動しました。広島の原爆ドームへの訪問は、参加者全員にとって忘れられない日となりました。生存者の方からその当時のお話を伺う機会があり、当時の被害の様子が目に浮かび、それほど遠い昔に起こった出来事ではないことを再認識しました。博物館で見た悲惨な情景は信じられず、アメリカ人であることに気が引ける思いで、今後この訪問で得たことを一生忘れず、世界平和についてもっと真剣に取り組もうと思いました。

広島市立基町小学校の校長先生と学校関係者の方々はとても明るく素敵な方々でした。特に校長先生は個性豊かな方で、この小学校に10年以上勤務されているようでした。この時に初めて知りましたが、日本では多くの校長や教職員は同じ学校に5年以上は勤務せず、学校間を異動するとのことでした。それがいいアイデアであるかはわかりませんが、日本では当たり前のようです。学校訪問後、バスとフェリーを乗り継ぎ、宮島へ移動しました。宮島でのツアーは興味深く、非常に綺麗な景色を楽しみました。レストランでの食事は、忘れらないほど絶品でした。出された料理には一品ずつ説明書きが添えられていて、いつ、何を食べているのかとても解りやすかったです。そこから京都へ移動し、夜の自由時間に寿司を食べに行きました。その後、IISTの服部さんが京都駅に連れて行ってくれました。服部さんはプログラム中同行してくださり、私たちを助けてくれる非常に親切な方でした。京都駅は素晴らしい構造になっており、屋外にある7階以上のエスカレーターに圧倒されました。夜の京都の街と人々をゆっくり楽しむことができました。

翌日は一日京都での自由時間でした。参加者はそれぞれ違うことをして楽しみ、そして思わぬところで鉢合わせしたりと気持ちが高まりました。アケミとエレンと私は、ミシガンからの参加者たちと竹林のツアーをしました。そして、京都の景色を一望でき、また猿をみることができる山へハイキングに行きました。この素晴らしい街を訪れ、言葉は通じなくても、行きたいところに行けて買いたいものが買えるという経験は、忘れられない思い出となりました。

私が出会った日本人に共通して言えることは、自分のことだけを考えずに集団として物事を考えているということです。通りすがりの人々でも、私たちのように困っている人をみるとすぐに助けてくれたり、駅への行き方や目的地までの道順を丁寧に教えてくれたりしました。このことは参加者全員が気付いたり、または体験したことでした。日本人のそのようなところが日本という国を素晴らしくしている要因の一つのだと感じました。

翌日は参加者にとって、めまぐるしい一日でした。まずは、法隆寺と東大寺を見学しました。2つのお寺の建築構造と職人技能には目を丸くさせられました。東大寺の僧の方によるツアーでは、お寺とその歴史についてお話いただき、大仏を間近で見ることが出来ました。世界最大の木造軸組建築と呼ばれる大仏の迫力には圧倒されました。この日の午後は奈良グループと斑鳩グループに別れ、各ホストファミリーと顔合わせの日でした。これから2泊3日共にするということもあり、参加者全員が緊張していました。私は斑鳩グループでしたが、たくさんの地元の人が温かく歓迎してくれ、ここでもセレブのように手厚いおもてなしを受けました。太鼓演奏の際には、私たちにも太鼓を打たせてくれました。その時に初めて私のホストマザーに挨拶をしましたが、彼女は少ししか英語が話せなかったので、感謝の気持ちを伝えるのが非常に難しかったです。小さな車で私を家に連れて帰ってくれると、ホストファミリー全員で歓迎してくれました。家は小さく感じましたが、3つもベッドルームがあり、キッチンと素敵なお風呂場がありました。皆が一緒に時間を過ごすリビングルームに必要なもの全てが揃っていて、ここでも「調和」を垣間見る事ができました。全員で夕食の支度をし、とても美味しい鉄板焼きを振舞ってくれました。屋外にテーブルを置き、私以外はみんな地面に座っていましたが、私には椅子を用意してくれました。初めのうちはお互いぎこちなく、理解しあうのに苦労しましたが、お父さんと私の電話の翻訳機能を使うことにより、やっとお互いの意思疎通ができました。お酒を飲み緊張が解れると、会話が弾みました。次の日は近所を散策し、彼らの町にあるお寺を見せてくれました。そして、食事を終え、スーパー銭湯に行きました。私にとって生まれて初めての銭湯だったので、男女別に裸で一緒にお風呂に入るということはとても真新しいものであり、異様にも感じました。しかし日本人にとっては普通であり、家族で楽しむ時間なんだなと実感しました。翌日は皆で美味しい朝食の用意をして食べた後、子供たちが学校に行くのを見送りました。彼らの制服姿はとても新鮮でした。今回のホームステイは私にとってとてもいい経験になりました。家族が一緒に何かをしようとしている姿やいつも笑って和やかに過ごしている様子に、愛が溢れているのだなと感じました。

ホストファミリーにお別れをした後、斑鳩町立斑鳩東小学校を訪問しました。校長先生と教育長に出迎えられ、授業を見学させていただきました。今回訪問した様々な学校には似たようなところがありつつ、異なる点も多くありました。教師がどのように生徒たちを教えているのかを直接見る機会があったので、いい勉強になりました。学校訪問を通じて、一つだけ驚いたことがありました。それは、初めに訪れた広尾学園以外の学校は、テクノロジーの利用がかなり少ないことでした。もっとテクノロジーの導入が進んでいることを予想していましたが、実際はそうではありませんでした。その後、新幹線で東京に戻り、ホテルに一旦戻った後、夜は自由時間でした。私のホフマン・エステーツからの同僚が丁度日本に滞在中だったので一緒にしゃぶしゃぶを食べに行きました。

翌日は一日自由行動だったので、同僚に東京を案内してもらいました。魚市場に行ったり街中を散策したりしましたが、そこでもまた「調和」を見かけました。電車の乗り降りがとてもスムーズで、困っている人がいたら助け、道端にはゴミ一つなく、思いやりをもって行動していることを感じました。

最終日はプログラムの感想をグループで話し合いました。皆、同じ体験をしているけれど、それぞれの思いがありました。最後の全体ミーティングでは、グループ毎にプログラム中に日本で体験したことについて発表しました。全員での最後の食事を終えた後、プログラム修了証書をIISTの方々から受け取りました。IISTとツアーガイドの方々はとても素晴らしく、彼らの仕事振りは大変優秀なものでした。信じられないほど素晴らしい体験を共にした事によりたった10日間という短い期間にも関わらず、参加者同士の絆は強く深まりました。そんな彼らの多くとはもう二度と会えない可能性が高いので、別れを言うのはとても辛かったです。日本という国、そして日本人に対して尊敬と称賛を改めて感じたことは、私の学校で伝えたいことの一つです。「調和」を通して助け合っていくことで、より多くを達成できるということを日本からアメリカに新しく来る生徒やその家族だけではなく、在校生や教師たちに伝えたいと強く思いました。