Is This Heaven? No, It’s Iowa.
“If you build it, he will come.” この天空のメッセージから始まる映画、Field of Dreams。Kevin Costner主演で1989年に封切されたこの映画は、野球を通じた親子の関係、また、野球を通じた多くの人の思いと夢を、切なく、でも清涼感一杯に描いています。そのストーリーと感動は、今もアメリカだけでなく世界中の多くの人々の心に深く刻まれています。まぎれもなく私もその一人で、聖地であるこの映画のムービーサイト( Dyersville, IA)には何度も訪れています。MLBのHall of Fameがあるooperstown, NY、毎年Little League世界大会が行われるWilliamsport, PAなども大好きな場所ですが、このムービーサイトは格別で、つい先日も真冬で雪一色と分かっていながら、気が付けばDyersvilleに向かう車のハンドルを握っていました。
DyersvilleはO’Hare空港より車で約3時間強、I90を西へRockfordまで走り、其の後ひたすらUS20を西へ。州境の街Galenaを通過し、更に西へ40 Milesほど走ったところのトウモロコシ畑の真ん中に、撮影当時のままに保存されたボールパークが現れてきます。ここがまさに私の聖地であるField of Dreamsです。このフィールドに、既に帰天したMLB選手たちが、ゴーストとして天国から降りてきて、様々な思いを持ちながら、昔の姿に戻ってプレーをする、という映画の設定です。実際にこの地のマウンドに立って、とうもろこし畑から流れてくる風に吹かれて頭を真っ白にすると、童心にかえって、本当にこの映画の中に入り込んでいける気がします。Black Sox事件の後、野球をしたくてもしたくてもできなくなったShoeless Joe Jacksonが今にも隣に現れそうな気にもなります。この映画で最初にこのフィールドに降り立ったのがWhite Soxのユニフォームを着た彼でした。
この映画、本当に様々なエッセンスが詰まりまくっているのですが、何度見ても涙が止まらないのが元メジャーリーガーで引退後に医師になったMoonlight Grahamの話。彼も実在した選手でした。彼はその可能性を嘱望され、地元の期待も背負ってNY Giants に入団するのですが、その後出場機会には恵まれず、MLBでの生涯成績はたった1試合、しかも1イニングで外野を守ったきり。一度もMLBのバッターボックスに立たずにユニフォームを脱ぐことになるのです。その後50年、医師として医療活動に専念していた彼がずっと持ち続けていた夢が「MLBで打席に立つこと」。これがこの夢のフィールドで実現するのです。現役時代の姿に戻り、念願の打席に立ち、MLBの投手から見事に犠牲フライを放ちます。これがホームランでなく、犠牲フライというところがまた憎いところです。その直後その試合を見ていた女児がベンチから落下、これを助ける為に再び医師の姿に戻ったGrahamはもう二度と打席に立つことはありませんでした。. . . 本気で甲子園を目指した高校3年の夏、最後の大会を同じような境遇で終えた元球児の私自身の思いも相俟って、感動が最高潮に達するシーンです。
さて、MLB引退後、医師として長年活動していたGrahamと、Kevin Costner演じるRay Kinsellaが初めて出会う場所、これは映画内ではミネソタという設定になっていますが、実はこのシーンは先述したアイオワとイリノイの州境の町、Galena, ILのダウンタウンで撮影されています。このGalena自体も古き良きアメリカが凝縮されたとても可愛くて素敵な街ですが、この映画のシーンと被せながらこの街をゆっくりあるくと、もっともっとこの街が好きになると思います。シカゴからの小旅行、もう少し暖かくなったら、是非、この映画を見た後に、計画されては如何でしょうか。
また、今年8月に、このField of Dreamsに隣接するとうもろこし畑の真ん中でMLBの公式戦が開催される予定になっています。本当です。White Sox対Yankees*です。この対戦カードも、この映画の登場人物に深く関係していますが、この続きは、いつかまたどこかで。
Is this heaven? No, it’s Iowa。
*コロナウイルスの状況により中止/延期の可能性あり