Do It Yourself

臼杵 達朗さん 三菱ターボチャージャアンドエンジンアメリカ

アメリカはDIYの国だと言われる。確かに家の設備も車の部品も店にはあらゆるものが並んでいて何でも自分でやることが前提。隣のお宅はガレージにあらゆる設備が常備されており週末は車いじり三昧。設備が多すぎて車がガレージに入れない、というのはどうかと思うけど。合理的だと言われるアメリカ人がこういうところにせっせと力を使っているのも面白い。でも自分は車も庭もいじれないのでDIYは縁がないと思っていた。

ところで私は食パンが大好きだ。中でも「超熟」は最高だと思っている。シカゴに赴任して色々パン屋さんを回った。最初はスーパーの膨大なストックを見て大興奮したのだが、きらめきは一瞬で消えた。

日系のパン屋さんも自分の好みと微妙に違う。韓国系のパン屋さんも少しストライクから外れている。アメリカのお店もおいしいと言われているところは行って見たのだがちがう。ならば、と自分で作ってみることにした。といってもホームベーカリーにやってもらうのだが。

日頃本格パン作りに慣れている方々からすれば「なにそれ?」なのだろうが、パン作りなんかやったこともないし、そもそも料理もほとんどできない。チャチャっとおいしいパンを作って手土産にし「これおいしいね!どこの?」というシーンを妄想していたのだが . . . なんだかとても固い物体が出来上がった。釘を打つのに良さそうだ。

再度レシピを見直してやっても同じ。その後数回繰り返したら目が慣れたのか少し食べものに近づいた(気がする)。水を加え、イーストを変え、毎回気温と湿度を測って記録を取り改善を繰り返していく。

おいしいパンが簡単に、というあの宣伝文句はなんだったの?エジソンの「私は10,000通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」との言葉と不安が脳裏をよぎるが、意識下に押し込み無我の境地へ . . .そして、ついに10回目で膨らみパンらしきものになった。

『おおっ!行ける! 』

勇躍し気合を入れ、ついに12回目で満足のいく外見ができた。でも何だかおいしくないんだよなぁ。かみさんはお世辞でおいしいといってくれたが、息子は「ぼくパン嫌いだし」と言い出し心も折れる。気を取り直し、更にデータを取り改善を重ねた結果、18回目でようやく満足できるパンになった。味は超熟にはまだ届かないものの、これこそ自分のDIYだと自慢した。みなすごいとほめてくれた。

『できた〜』
でも . . . うまくいった理由はデータでも改善でもなく結局気温が暖かくなったから、とは言えなかったし、息子はいまだにパンが嫌いだ。
どこかにおいしいところはありませんか?